東京高等裁判所 昭和41年(行コ)26号 判決 1967年2月06日
控訴人 茨城県石下町選挙管理委員会
右代表者委員長 小林俊一
右訴訟代理人弁護士 大塚粂之亟
被控訴人 茨城県選挙管理委員会
右代表者委員長 松野貞夫
右指定代理人被控訴人事務吏員 児玉雅雄
<ほか二名>
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人が昭和三九年三月二八日にした『昭和三八年一〇月三〇日執行の飯沼土地改良区総代総選挙における選挙の効力に関する異議の申出に対して同年一二月一八日石下町選挙管理委員会がした決定はこれを取り消す。右総代総選挙は無効とする。』との裁決を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴指定代理人は本件口頭弁論期日に出頭しなかったが、陳述したとみなすべき答弁書によれば「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」というにある。
当事者双方の事実上及び法律上の主張は原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
理由
一、控訴人の本訴請求は、昭和三八年一〇月三〇日施行にかかる飯沼土地改良区の総代総選挙に際し、訴外上林修平において右総代に立候補して落選したが、同人は土地改良法第二三条、同法施行令第二七条にもとずき控訴人委員会に右選挙の効力について異議の申立をしたところ、棄却されたので、さらに被控訴人委員会に審査請求をした結果、被控訴人委員会が請求の趣旨記載の裁決をしたにつき、控訴人が被控訴人を相手どり、右裁決に違法の点があるとしてその取消しを求めるものであるというにあることは、その主張自体に徴し明かである。
右によれば、本訴は、これをその形式的側面からすれば行政庁にあたる控訴人委員会と被控訴人委員会との間において被控訴人委員会の権限の行使について生じた紛争であるというべきであるから、行政事件訴訟法第二条にいう機関訴訟というべきである。そして機関訴訟は同法第四二条により法律に定める場合において、法律の定める者に限り、これを提起しうるものであるところ、土地改良法、同法施行令はもちろん、その他法令にも、町選挙管理委員会が県選挙管理委員会を相手どり前示裁決を不服として訴を提起しうる旨の規定は存しないから、控訴人は本訴を提起しえないというべきである。またこれをその実質面からすれば本訴は右選挙の効力に関する被控訴委員会の判断を争うものであって、本質的には一の民衆訴訟といいうべきものと解されるが、この場合も行政事件訴訟法第四二条により法律に定める場合に法律の定める者に限り許されるところ、前示土地改良法、同法施行令その他の法令に控訴人からする本件の如き訴を許した規定はないから、この点でも失当である。しかのみならず、本件土地改良区総代の選挙の効力についての不服審査の過程において控訴人は第一次の判断者であり、その判断に不服ある前記候補者上林の審査請求によりその上級庁(土地改良法施行令第四六条参照)である被控訴人がさらにこれについて裁決をもって判断したものであり、控訴人は当然この裁決に拘束せられるべきものであるから(行政不服審査法第四三条)、これを不当として自ら裁判所に出訴するがごときは争訟の法理からしても許されないものというべきである。
二、よって控訴人の本訴請求は不適法として却下すべく、これと同趣旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長判事 浅沼武 判事 間中彦次 柏原允)